ちょっと嫌いなひと


今日、ちょっと嫌いなひとに会いました

近所のスーパーで会いました
ご夫婦でお買い物に来られていました

近所のスーパーは当然知り合いによく会う場所です
友達、顔見知り、見たことある人、遠い親戚、昔ちょっと話したことある人、嫌いな人

ちょっとです、ちょっと嫌いなだけです

息子の友だちのお父さんで、部活が同じだったこともあり、小学生の頃から家族ぐるみでお付き合いをしています

一緒に応援に行ったり、バーベキューをしたり、飲み会をしたり

とは言え、昔からの知り合い、高校の同級生、しょっちゅう連絡を取り合う、そんな関係でもありません

子供を通して知り合った保護者として、楽しくお付き合いをさせていただいていて、大切にしている存在です

それでも、ちょっと嫌いな瞬間があるのです。



スーパーの陳列棚の端と端の距離で、ご夫婦に気付きました

子どもたちが高校生になり、交流も減り、しばらく会っていなかったので、久しぶりの再会に声をかけたい。という気持ちと、向こうが気づいていないならこのまま気づかぬふりで立ち去ろうか…という気持ちで

一瞬迷いました

でも、もしかしたら向こうもチラッと気づいていたかもしれない、それなら避けたと思われるのは残念
そう思い、私の方から声をかけることにしました


声をかけることをためらったのは、そのご夫婦が嫌いだからではありません

そもそも、スーパーで誰かに会って立ち話になるのは普通にめんどくさい

それと、今日、私は出かける予定があり、近所のスーパーに行くにはちょっとめかし込んでいたからです
部屋着で会うのも恥ずかしいけど(部屋着で外出るな)、めかし込んで会うのも恥ずかしいものです

『お〜い、こんにちわ』と、声をかけると

ご夫婦は私のことには気づいていなかったようで

『おお!こんにちは。久しぶり』と、驚いていました

そして、ご主人が、挨拶代わりに私の容姿に触れて軽い冗談を言います

だから私はちょっと嫌いなのです

私は自分の容姿について、コンプレックスを持っている部分があります

そこをいつも冗談交じりに触れてくるのです

傷つく、と言うより、正直めんどくさい
イラッとする感覚があります

以前も、学校行事でご夫婦に会ったときに、ご主人にその部分について
『罰ゲーム?』と言われたことがありました

容姿いじりをしつこく続けるわけではなく、挨拶代わりに軽く触れてくるだけなので、捉える側の私の問題かもしれません

私が強くコンプレックスを感じているから、その一瞬をサラッと流すことができないのかもしれません

『罰ゲーム?』と言われた時も、会う前から、なにか言われるかもしれない、言うとしたらあのひとだろうな
という予感はありました

なので、案の定といえば案の定、想定内です

それでもまさか『罰ゲーム?』と言われるとは思っていませんでした
想定外です

なんか、大学生の合コンで、ブスにだけ強く出るしょうもない男子みたいやな、と思いました


それから5ヶ月、そのことをすっかり忘れ、無防備に声をかけたら、二言目にまた容姿について触れられて

そこからの私は会話もしどろもどろ、顔も引きつり、自分でも何を話してるのか、落ち着いて会話ができないのです

そっけなくなく、話し込むことなく、ちょうどいいぐらいに会話を盛り上げ、適度なところで切り上げたい

これ以上、私の話はしたくない

挨拶だけで終わるのもよそよそしいかと、聞かれてもいない息子の話や、他所の子の話題まで出して…

あぁ、私はなんて自分に自信のない人間なんだろう
そんなことそろそろもう克服しろよ
もっと堂々と生きろよ

と自分でも思うのです



そのご夫婦のことが嫌いなわけではないのです
誘われれば喜んで誘いに乗ります、楽しいのです
楽しい経験をさせていただきました

わざわざ、そのことを誰かに相談したり、愚痴ったりすることはありません
それでも、その一瞬が、私の中にしっかり影を刻んでいます

だから、ちょっと嫌いだな
っていう、気持ちが私の中に生まれたんだと思います

しんどいな…、めんどくさいな…

それでも嫌いとは言い切れない…

よくよく考えたら、40歳を超えた大の大人が、40歳を超えたよその奥さんの容姿について触れてくるってのは
やっぱりなかなかのことだとも思います

奥さんも隣にいて、『そういうこと言わないで』
とご主人に言わないもんなんだなぁ
とも思うのです

これが、人から聞いた話なら、ずいぶん非常識な人だと非難するんだと思います

それでも、そのご夫婦のことを嫌いではない
という私の心理はいったいどういうものなのだろう…

あんなことを言われて、嫌いじゃないなんて…
私はお人好しなのかバカなのか

なんのために彼らのことを嫌いになれないのだろう…
自分でもわからないけど、今は嫌いとは思えないのです

ちょっと嫌いな瞬間があるだけなのです

もっと、自分の気持を素直に受け取ってあげてもいいのか
もっと、私のことを大切にしてあげるべきなのか…

自分でも自分のことがわからないことがあります
これもその一つ


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